投資信託は株式に比べるとリスクが少ない商品だといえます。
その理由は、突然急落することもないし、じっくりと考えて投資できるからます。
にもかかわらず、投資信託で失敗してしまう人が多くいるのも現実です。
1つ面白い話がありますので紹介しましょう。
アメリカに有名な投資信託があり、設定当初の1963年に100万ドルを投資した人は、1999年末に17億ドル、実に投資額の1,700倍もの利益を手にしたという夢のような現実があります。
この投資信託、特に1980年~92年にかけて、年率複利収益率が29%という驚異的な運用成績を記録しています。
これだけ上昇率の高い投資信託なら、投資した人のほとんどがかなりの儲けを出したと思いますよね。
しかし、意外なことにこのファンドで、保有者の多くの人が損失を出したそうです。
なぜこんなことが起こってしまったのか?
実は保有していた多くの人が、上昇し始めた時期に購入したのですが、一時的な下落にパニックに陥ってしまい売却してしまったそうです。
ちなみにこのファンドの平均保有期間は、僅か7か月だったそうです。
ここから読み取れる教訓に、投資信託の特徴がよく表れている事例だと思います。
投資信託が確実に儲かる商品でないことはわかっていますが、長期で保有するからには一時的な事象に左右されることなく『じっと待てるか』、どんな場面でも『的確な判断ができるか』が、資産を殖やす鍵になっていることがわかります。
長期で資産運用を考える投資信託は、選んだ銘柄を長期保有することで「継続する力」が発揮されます。
投資信託で失敗しないためにも、失敗する典型的なパターンを幾つか紹介しましょう。
投資信託で失敗する典型的なパターン
■ 専門家の意見を鵜呑みにする
投資信託運用のプロや専門家、評論家などの意見を参考にするのも方法の1つですが、そのまま鵜呑みにしてしまうのは問題です。
専門家やアナリストが自身の経験に基ずいた意見を言うのは当たり前のことですが、先のことは例えプロでもわからないということを知っておくかなければなりません。
知人の薦める商品を購入する
とか
格付会社が選んだファンドをそのまま購入する
といった、他人任せにしたのでは投資に失敗してしまうでしょう。
未来に起こることを正確に読むことは誰にもできません。
自分の考えや他人の意見だけでは資産は殖えないということです。
さまざまなデータを分析して、冷静な目で判断することが大切です。
■ 運用の仕組みが理解できていない
運用の仕組みがわからない投資信託に手を出すと失敗してしまう可能性があります。
仕組みが分からなければ、購入した投資信託がこれから先、どのような値動きをするのかもわかりません。
例えば「プレミアム」と名の付く投資信託。
「他の商品よりも運用成績がいいのでは」と思いますよね。
ところがここでいう「プレミア」とは、オプション取引や通貨取引で用いられる用語であって、一見すると特別な利益がありそうに見えますが、そんなことはありません。
むしろ、プレミアムと名の付く投資信託や、目論見書にプレミアムという記述があるものは、他の商品よりも複雑な取引が行われていることが多いことを知っておく必要があります。
どのような商品に投資しているのか、その仕組みがよくわからないままに投資してしまうと、上手くいかなかった時にどのように対処すればいいのかもわからないでしょう。
運用の仕組みをよく理解した上での投資が、リスクを回避するためにも重要です。
■ 分配金の仕組みがわかっていない
分配金の仕組みをきちんと理解していないと、結果として損をしてしまうことになりかねません。
分配金は預金利息や配当金とはまったく違ったものです。
分配金が出たとしても、それがすべて利益になるとは限りません。
「毎月○○○円とか、〇〇○○円分配します」といった言葉に惑わされてはいけません。
きちんと利益を積み上げることができるファンドでなければ、分配金の多くが特別分配金という名目で支払われます。
つまり、元本を払い戻してるだけにすぎません。
逆にいえば、特別分配金が出るということは、保有している投資信託の価値が下がるということになりますので、売却しても購入時のお金の一部しか戻ってこないことになります。
結果として、自分のお金を毎月小分けにして返してもらっていただけということになってしまいます。
運用の仕組みをよく理解しない投資は、結果として損をすることになります。
■ 思いつきや思い込みで決める
投資信託だけに限りませんが、思いつきや思い込み、その時の気分でやっていると痛い目に合うことになります。
長期の資産形成を目的にこれまでコツコツと買ってきた投資信託を、プラスになったからといって目先の利益だけを考えて売却するのはあまりオススメできません。
目先の利益を見ているのか、10年後の利益を考えているのか、その都度思いつきで投資方針がブレれてしまっったのでは資産形成もおぼつきません。
投資は買い時が難しく、売り時はもっと難しいものです。
値上がりしたからといって一気に売ってしまって後悔するよりも、時間をずらしながら少しずつ売っていくのが基本だと考えます。
一番のオススメは、相場を気にせず行える『リバランス』です。
リバランスについてここでは説明しませんが、その効果はリスク分散だけにとどまりません。
値上がりによって、割高感の出てきた資産を売却して、割安感の出てきた資産を買うことによって、合理的なリターンの追求が可能になります。
資産運用の代表的な手法として分散投資が挙げられます。
『卵を1つのカゴに盛るな』という投資格言があるように、投資対象を複数の資産や国、通貨に分散することで、リスクを極力少なくコントロールしながら、資産運用することが大切です。
思いつきや思い込みでやっていると一度や二度上手くいったとしても、長いスパーンで見れば失敗の原因にもなりかねません。
運用の仕組みや分配金のこともよく理解して、損失を出さないためにもしっかりとしたルールを決めて運用していきましょう。
間違った投資信託選び
間違った投資信託を選んだとしたら、市場が活発で好調なのに損失を被ってしまったり、まったく資産が増えないといった悪いパターンに陥ってしまいます。
私の経験から、やってはいけない投資信託選びを紹介します。
■ 人気のテーマ型投資信託
投資信託を選ぶ時、「今人気の商品」と聞くと、何だか安心な気分になります。
人気の商品だから、今のトレンドにあった商品ならと考えるのは危険です。
投資の窓口では、その時々で売りやすい商品の販売に力が入れられています。
例えばリートやハイイールド債に投資するもの、通貨選択型、毎月分配型など、高利回りを謳うタイプの商品がそれです。
それらの中には高い手数料が引かれるものも少なくありません。
しかもこれらのファンドは、特定の国や通貨に集中して投資されているものも多く、長期の資産形成に適さないものが多く、ポートフォリオのコアとしては向いていません。
利回りの高さだけに惑わされることなく、自分の目的に合わない高コストな商品は除外すべきです。
■ 分配型投資信託
目先の高配当にばかりに目が行ってしまうような、毎月分配型の銘柄は選ばないことです。
毎月分配金があるということは、毎月決算が行われているわけで、手間やコストがかかっているはずです。
毎月分配金を受け取っていても、実は資産が目減りしているリスクが考えられます。
基準価額が下がっていないかも併せて見るべきで、分配しないで再投資した場合の基準価額がどう動いているのか、つまり投資信託は配当金と基準価額の増減を合わせたトータルリターンで見ることが大事です。
■ フル投資型投資信託
フル投資型の投資信託を選ぶこともオススメできません。
フル投資型とは、運用する資金のほとんどを、相場が悪い時でも株式などの金融商品に投資をする投資信託のことを指します。
もし投資家から集めた資金のすべてを株式に投資していたら、何か突発的なことが起きたらどうなるでしょうか。
為替や金融に関する突発的な悪い材料には、ほとんどの株が反応して株価が大幅に下落することになり、それにともないフル投資型の投資信託は大幅に下落することになります。
これでは買い時、売り時のタイミングをみすみす逃してしまうことになります。
購入する際には、目論見書などで運用方針をしっかり確認しておくことが重要です。
投資信託選びのポイント
では、実際にどのように投資信託を選べばいいのでしょうか。
先にも言いましたが、まず人気のテーマ、分配型投信をやめること、そしてフル投資型投信もできれば選択肢から外すことが好ましいといえます。
最も望ましいのは、株式や債券に投資する投資信託の中で、キャッシュポジションをとれる投資信託を探すことです。
つまり、キャッシュの比率を機動的に変えられるものを選ぶわけです。
これは、相場が下落した時には現金化して、相場が上昇している時には有望銘柄を買い増しすることで、下落をおさえて上昇機運に乗ることができるからです。
次にファンドマネージャーの腕がいいいかどうかもポイントになります。
ファンドマネージャーによって利回りも大きく変わってきます。
ファンドマネージャーを探すのが難しければ、運用成績のいい投資信託を探す方法もあります。
最後に、運用の対象が何なのか、銘柄はどうなっているか、ということです。
実のところ、多くの銘柄に投資するよりも、集中して厳選した銘柄に投資を行う方が上昇機運を捉えやすく、パフォーマンスが良くなることがわかっています。
市場全体が下がったとしても個別銘柄の中には上昇しているものもたくさんありますからね。
リスクをできるだけ小さくするためにも、この3つの基準を総合的に判断して投資信託を選ぶといいでしょう。